【日本語チューター】スピーチ大会 変(か)わった?わからない 「一人(ひとり)の外国人(がいこくじん)の自問自答(じもんじとう)」
- カテゴリ:
- 日本語チューター
- 日本語クラスイベント
コミュニケーションスタイル:
変わった?わからない。
「ボディーランゲージ」
前の私は、誰の前でも、まっすぐな姿勢で、しっかりと相手の目を見て話しました。今では、頭を下げたり、手を合わせたり、いろんなところで周りの人のボディーランゲージを真似したりします。話すときは、うなずき、あいづちも使っています。例えば、ある人が「ごめんなさい。」と頭を下げて来たら、私はすぐに自分の頭を下げて、姿勢をその人に合わせます。
不思議ですね。
「空気を読むこと」
前の私は、誰とでもフランクな話し方で、硬い雰囲気を和らげるために、ジョークをよく飛ばしました。今では、周りを見て、「あぁ、こういう時は自分の意見を言わないほうがいいかな」と思う時がよくあります。代わりに「それはちょっと...」とか「それはできるといいですね..」とか、もっと柔らかく、遠回しな言い方をします。
私が、周りにこんなに気を遣っているのは、なぜだろう。
「説明」
わからない。しかし、これまでとは違った、このコミュニケーション・スタイルは面白いですね。言葉自体には、情報が少ないからこそ、言葉ではない部分に集中させられます。その人の表情、声のトーン、仕草とかをよく見たら、余計なことを言わなくても、その人の本音を見抜くことができます。こうやって非言語コミュニケーションに慣れたことで、以前よりも、相手の気持ちも感じ取れるようになったと思います。
考え方:
変わった?わからない。
「概念」
前の私は、「多様性、個人の自由、社会的平等、LGBTQの権利」とかについて考えていました。今では、「心、気、和、本音と建前、集団行動、人に迷惑をかけないこと、思いやり」とかを考えています。日常生活で「いただきます、ごちそうさまでした、よろしくお願いします、おかげさまで、」という言葉を使っています。
こういう言葉って英語にあるのかな。
「上下関係」
前の私は、人の社会的立場とか、肩書きとかを気にせずに、誰にでも気軽に話しかけました。今では、人に会っては自己紹介が当たり前。紹介されるときは、その人を名字で呼ぶべきか、「先生」という敬称を付けるべきか、考えます。良く知っている人でも、自分はその人と、どんな関係を持っているかを考え、相手によって言葉を使い分けています。
私が、周りとの距離感をこんなに意識しているのは、なぜだろう。
「説明」
わからない。しかし、これまでとは違った視点で周りを観察すると、考えさせられますね。良い意味で、上下関係がはっきりしている社会では、自分の立場と役割が分かりやすいです。私は、広い人間関係のネットワークに繋がっている、たった一人の人間だということに、気が付きました。そして、違う眼鏡を通して社会を見るようになったことで、もっと謙虚な人になったと思います。
結論:
変わった?確かにそうですね。
私は、ただ言語を勉強しているだけだと思っていたのに、いつの間にか、変わってしまった。今の私は、周りの人の身振り手振りを真似し、場の雰囲気にも合わせてしまいます。しかし、非言語コミュニケーションを学び、相手の気持ちも感じ取れるようになるなら、それは良いことでしょう。そして、今の私は、日常で使っている言葉にも影響されて、上下関係も感じてしまいます。しかし、社会における自分の役割を意識するようになり、より謙虚な人になれるなら、それもありがたいことです。
こうやって自問自答を繰り返しているうちに、たまに深い気づきを得ますよね。結論は?ここまで来た私は、より完成した人間になったのか。それはわかりません。でも確かに、変わってしまった今の自分のほうが好きです。
ケイリー カン(カナダ)